治療方針の特徴

リハ専門医による初期評価とゴールの設定とリハビリテーション処方

 回復期病院の対象疾患は、疾患(病気)や外傷など種々で、入院期間は均質なものではありません。
 当院ではリハ専門医・認定臨床医が、入院時にゴール(どこまで良くなるのか)や、必要な入院期間の予測をして、患者さまとご家族に説明します。予測は患者さまの訓練の進歩状態により、変わることがありますので、カンファレンスを行って修正し、面談でご説明いたします。
 リハ医は患者さまに必要なリハ治療を処方して、治療プログラムを回復に応じて変えていきます。

早期離床(寝かせておかない)

 アメリカでは重症な合併症がない場合は、発症後早期(発症後2〜3日)からリハビリテーションを開始しますが、我が国の第一線医療では患者さまの高齢化が進んで合併症があると臥床期間が長くなる傾向があります。
 発症早期での安静がリハ(機能回復)にもっとも大きな支障となります。臥床が長引くと「廃用症候群」といって筋肉だけでなく、呼吸、循環、精神などあらゆる器官(臓器)が機能不全に陥ります。この機能低下は高齢者ほど、早く陥りもとの状態に戻りにくくなります。この観点から、回復期リハでは「臥位は害」ということを徹底させてできるだけ早くから、離床し訓練を開始します。
 当院では転院即日や翌日より車椅子に座らせて、座位訓練や起立訓練を行います。

ベッドサイド訓練の開始(車椅子駆動・移乗)

車椅子座位耐性・バランス訓練

 ベッド上での寝かせたまま行う訓練は積極的なリハとはいえません。日中には臥床を極力さけて、車椅子に乗せて、車椅子座位を開始します。座位をとらせるだけでなく、座位時間を延長させ(座位耐性訓練)や、身体を動かすこと(座位バランス訓練)や車椅子駆動訓練を開始します。

車椅子駆動訓練

 車椅子を自分でこぐこと(車椅子ドライブ)が大切です。脳卒中による片麻痺でも、良い方の手と足を使えば可能になります。手足を自分で動かすことは、運動訓練になるだけでなく、精神的にも活性を与えます(賦活性)。さらに、運動は筋肉ポンプとしての作用(全身に循環機能を高める効果)は重要です。

移乗訓練

 ベッドから車椅子に乗り移ること(またその逆)を移乗(トランスファー)といいますが、これが一人でできることはリハビリテーションが目指す「自立」への最も基本的な動作です。最初は介助が必要でも、繰り返して行い自立を目指します。車椅子、ポータブルトイレへの移乗ができれば、歩行ができなくても、ベッド周りの生活が一人でできることとなります(車椅子レベルの自立)。

運動回復よりADL(セルフケア・排泄・更衣など)自立がまず大切

 障害者、とくに高齢者にとって最も大切なことは、ADL(身の回りの生活)が自立することです。トイレやベッド周りの生活の自立は、精神の賦活にも大きな影響を与えます。

起立(立ち上がり)訓練は基本的訓練

 我々回復期病棟では、起立訓練を運動療法の根幹においています。立ち上がりの回数は、30回イスから繰り返し立ち上がるのを1クールにして数回行うことから始めます。出来れば一日で10回くらいまで増やしていきます(合計300回/日)。立ち上がり訓練(起立)を行うことにより、健側下肢の筋力増強、体幹筋力の増強、麻痺の回復、動的バランス(dynamic rhythmic balanging ex.)の改善が得られます。立ち上がる姿勢は体感が前屈するのではなく上に立つように心がけます。
 起立訓練は、退院後も行うことによって体力や活動の衰えもなく過ごせます。

歩行訓練

 歩行訓練は前述の立ち上がり訓練、以上訓練など基本的動作訓練、下肢装具処方の延長上にあります。地道な訓練の積み重ねが患者さんの早期歩行に導きます。

装具(長下肢装具・短下肢装具)治療を行います

 起立や歩けることはきわめて大切なことです。麻痺した下肢で十分な支持する力がないときには、早期から装具を使うことが大切です。装具の使用は、起立や歩行が可能になるばかりでなくADL(身の回りの生活)の自立に役立つこともよく知られています。

高次脳機能障害に対するリハ

頭部外傷、脳挫傷などによる高次脳機能障害、さらには脳卒中にともなう高次脳機能障害には、臨床心理士による各種神経心理評価などを行い作業療法では高次脳機能の活性化を図る作業を行います。青年や中高年には復職リハがoverlapしてきます。

復職に向けてのリハ

 当院では、病前に仕事をもった患者さんは仕事に帰ることを前提としてリハを行います。復職には脳卒中などでは、手足の身体機能だけでなく高次脳機能の評価と職業前訓練など様々なアプローチと家族の協力が必要です。退院前あるいは通院中に、会社とのミーティングを考慮します。

嚥下障害のリハ

 高齢人口の増加で、嚥下障害を持つ脳卒中患者などは増加しています。前医で胃瘻をつくったケースや必要な場合当院外科で胃瘻造設を行います。嚥下障害は誤嚥性肺炎や廃用症候群が合併することが多く、リハアプローチを難しくします。歯科医の協力を得て、食事の自立に向けて看護師、言語治療士や作業療法士が努力しています。